人間誰しも年を取るものですが、高齢になるほど高まるのが「認知症」のリスクです。
判断力を奪う認知症は、定年もなく、入居者募集や建物修繕に関する判断、賃貸借契約締結などがついて回る賃貸経営者にとって、より深刻な問題です。
こんにちは!ビジベース管理人の『キク』(@busi_base)です。
厚生労働省の発表では、2025年には高齢者の5人に1人が認知症になると予想されています。
子孫に残すはずだった賃貸住宅も価値が損なわれかねません。
そんな認知症の対策として有効な「委任契約」について今回は解説していきたいと思います。
※もう一つの認知症対策「家族信託」については家族信託とは?基本的な仕組みや活用方法と具体例もご紹介します!をご覧下さい!
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賃貸経営中に認知症になった場合のリスク
契約の有効性が問題になる
意思確認ができないため、賃貸借契約を結んだ借主も法的に不安定な立場となってしまいます。
建物や設備の修繕等の判断ができなくなる。
余計な工事の発注や必要な工事の放置から、原状回復工事などの判断できず、建物管理と呼べるような状態ではなくなってしまいます。
クレームや交渉に対応できない
入居者からクレームや値下げ交渉などに対応できなくなってしまいます。
詐欺被害に遭いやすくなる
過剰な工事等を勧める悪徳業者や、詐欺などの被害に遭いやすくなります。
以上ご覧頂いたように、認知症を発症してしまうと、とても賃貸経営ができる状態ではなくなってしまいます。
勝手に認知症の本人に代わって法律行為を行うことは出来ない。
「自分が認知症になっても、パートナーや子どもが判断してくれる」とお考えの方も多いかもしれません。
しかし、残念なことに、法律の世界ではそれが許されません。
たとえ肉親であっても、本人に代わって法律行為をするためには、法律上あらかじめ認められていたり、裁判所などに申し立てて認められたり、きちんとした形で権限が渡されることが必要です。
万一の際、パートナーや子どもに判断を任せるには、次の3つが有効です。
1.委任契約の締結(認知症前)
2.家族信託契約の締結(認知症前)
3.成年後見人の選任(認知症後)
今回はこの中の「委任契約」に焦点を当てていきます。
委任契約は手軽な対策
成年後見人は、判断力の衰えた本人に代わって契約行為や財産管理をすることが可能です。
家族が後見人となれば安心ですが、成年後見人制度を利用するには自分が認知症を発症していなければなりません。
そのため事前準備ができず、あとは家族の判断に任せることになってしまいます。
そこでおすすめなのが、ご家族等との『賃貸物件管理に関する委任契約』の利用です。
先述の通り、きちんと権限が渡されていれば、その範囲内において代理人が独断で法律行為を行うことが可能です。
家庭裁判所への申し立て等が必要な成年後見人と違い、当事者間で委任契約を交わすだけで、様々なことが合法的に進むようになります。
委任契約は手軽で有益な対策の一つと言えます。
委任内容のポイント・注意点
委任の範囲などは、お互いの合意の元に自由に取り決めることができます
代理権を与えるにしても好き勝手にさせたくない、というのであれば、制限を加えることも可能です。
例えば、賃貸借契約は締結させるが、賃料5万円以上でないと締結を認めない、といった内容も有効です。
また、委任はいつでも取り消しが可能であり、権限付与の時期についても「医師より認知症と診断された以降」としても構いません。
もちろん、委任契約を交わした後でも、健全な本人が締結した賃貸借契約などは全て有効です。
ただし、委任契約は簡単で有効な手段ですが、以下の点には注意が必要です。
・本人が認知症になった後での委任契約は無効
・物件売買は、登記時の司法書士による本人意思確認などがあるため事実上不可能
・受任者を監督する機能がない
など、委任契約にもデメリットはありますので、よく憶えておきましょう。
まとめ すぐにでも委任契約は可能です。
決して万能というわけではありませんが、今すぐ出来るのが委任契約の長所です。
最終的には成年後見人を選任するにしても、それまでの間に生じる問題をスムーズに解消できます。
明確な形で委任することは、ご家族の絆を深めることにも繋がるはずです。
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